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汽車は行くよ2 [思い出]

駅は古い木造駅舎で時刻表は黒板にペンキで書いたものだった。当時はわからなかったが時間と行先と種別(急、快、普)以外に気と列と書いてあったような気がする。おそらくは急気とあったので急行気動車だったのだろう、急気ひまわり、急気火の山、だったような気がする。列は列車で客車をSLがけん引していた。当時の客車は内装が木で扉の取っ手は真鍮だった。丸いカバー丸の下は白熱電球で暖かく車内を照らしていた。だが、何と言っても旧型客車は外のドアが手動式なので開いたまま走ることができた。足場に腰かけて足をぶらぶらさせながら乗っていた、減速したところで飛び降りることもできた、今なら考えられないが。そして、トンネルに入る前の窓閉めも当たり前のことだった。閉め忘れると顔が黒くすすけてしまう、そしてあの石炭の燃える匂いが立ち込める。熊本との県境区間や阿蘇の立野などでは登れないのではと思えるほどあえいでいた、阿蘇の重連は名物でもあった。汽笛の音も哀愁を帯びて、特に最終列車の汽笛はなんだか今日が終わった感がすごかった。汽車は時計代わりのように生活の中に溶け込んでいた。
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