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境界線 [世捨て人]

せっかく伸ばした手が離れて行く
触れることすらできないで
肩が抜けるほど伸ばしたのに

私が知っているあの人は
静かに病院のベッドに横たわり
少し口を開きながら
うつろな目を開けていた

私は病室の壁にもたれて
じっと見つめていた
どれくらいの時間が残っているのだろう
恐る恐る伸ばした手
白くてか細い手を握り締めて
静かに顔を近づけた
苦しい息の中でこちらを見る悲しそうな目
私はぽろぽろ涙を流しながら
精一杯の魔法の言葉をささやいた

時間はそこで止まっている
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