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夏の終列車 [世捨て人]

真夏の夜の夢、では無いが寂しい停車場で最終列車を待ちながら裸電球の下でぼんやりしていた。甲虫がカチッと落ちて逆さまでもがいている。やがて自分で起き上がる事は分かっている、しかし私は彼を摘み上げ空へ投げた。直ぐに羽根を広げて飛んでいく、そう思ったが彼はまた電燈に戻りまたカチッと音を立てて落ちてきた。哀しい性と思いながら、またつかみ上げようとして手を挟まれた。私はこの野郎と踏みつけた、と思ったが再び愚かな甲虫を摘み上げ電燈の柱につかまらせた。そして入ってきた列車に乗り込み、窓の外の電燈の柱を見た。彼はそこから動いていなかった、私は笑いながら所詮は虫だと呟いた。私も所詮は虫ケラだけど。
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