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さよなら東京 [旅]

昔、故郷を離れた時もうここに住むことはないだろうと思った。あのときの故郷の駅はまださびれていなかった。学生たちの声が溢れていた。東京へ向かう寝台列車の中で窓の外の移りゆく景色を眺めながら私は胸の高鳴りを覚えていた。東京駅に降り立ってまだ住むところさえ決まっていない、それでも不安を超える何かが私を捉えて離さなかった、あれはまだ19の春だった。あれから40年以上が過ぎ東京も私も変わった、そしてもっと変わったのは故郷だった。荒れ果てて森に帰りつつある田畑、誰もいない駅。私は東京の郊外の隅っこに小さく命を長らえている。もうすぐ、どこかへ行ってしまおうかと思っている、涙が枯れ果ててしまわぬように。
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